Q.父が亡くなりました。母は先に亡くなっており、相続人は私と弟のみです。父は長い間認知症でしたが、主に私が父のもとに通い、介護していました。ところが、亡くなった後に父の遺言が見つかり、財産のほとんどを弟に相続させると書かれていました。父は認知症が軽い時期に、お世話になるから財産は私が相続できるようにしたいと話していましたし、遺言が作成された時期は父はほとんど話もできなかったはずです。父が書いたとは到底思えないのですが、どうしようもないのでしょうか?
A.被相続人の遺言が、被相続人の意思に基づいて書かれたとは思えないような内容である場合、遺言の無効を主張することができます。
遺言の無効事由には、定められた方式に則っていないという形式的なもの、偽造や変造等のほか、作成した当時に遺言者に「遺言能力」がなかったことがあります。
「遺言能力」は、15歳以上の人で(民法961条)、遺言の際、遺言という法律行為をするための意思能力を有していたといえる場合に認められます(同963条)。
仮に認知症の症状などがあったとしても、遺言の時に、一時的にでも事理弁識能力が回復していた場合には遺言をすることができますが、遺言能力の有無については、医学的な判断が尊重されつつも、裁判所が判断することになります。
遺言能力の有無については、遺言の内容、遺言者の年齢、病状を含む心身の状況及び健康状態とその推移等、遺言者の状況を総合的に見て、遺言の時点で遺言事項(遺言の内容)を判断する能力があったか否かによって判定すべきとした裁判例もあります。
お父様についても、遺言がなされた時期のお父様の状況を検討し、遺言能力がなかったといえる場合には無効を主張することができます。
遺言の無効確認については、調停を先に申し立てることとされていますが(家事調停法244条、257条1項)、調停での話し合いで解決できる見込みが少ない場合も多いため、はじめから遺言無効確認訴訟を提起する場合もあります。
まずはご相談ください。
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